前回に続きまして、認知症が発症してしまった時の法的ポイントについて少し書いてみます。
仮定として、ご両親に認知症が発症してしまったケースで考えてみましょう。
その時、認知症の程度にもよりますが、原則として法律行為ができなくなります。
法律行為?
少し専門的な言葉が出てきましたので、具体的な例を挙げてみましょう。
例えば、スーパーで買い物をすることも、宝石や不動産を売買することも、「売りましょう」「買いましょう」というお互いの契約の上に成り立っています。
しかし、認知症が発症してしまうと、その程度にもよりますが、「売りましょう」「買いましょう」の意思を表すことが難しくなってしまいます。
普段の日常生活では、スーパーやコンビニでも「売りますよ」「では買いましょう」という契約のやりとりは見かけませんね。
でも、大きな買い物、例えば「不動産の売買」では「売る」「買う」の契約意思が明確に求められます。
ですから、その意思を明確に表せなくなると、契約ができなくなります。
「あ~、そんなことか」と思われるかもしれません。
しかし、不動産の売却が出来なくなるということは、施設の入所費用や病院代その他デイケアサービス等の諸費用を、ご両親の持ち家の売却代金から捻出しようと考えていた場合、身動きが取れなくなります。
介護にかかる経済的負担、心理的負担、肉体的負担は相当なものです。
この場合、別ルートとして家庭裁判所に成年後見人を選任してもらって、不動産の売却を進めるという方法もあります。
しかし、この方法だと経済的負担や時間的損失が発生することが考えられますので、次回その辺りを詳しく書いてみたいと思います。