相続の名義変更登記を放っておくリスク
例えば、誰も住まなくなった建物を相続したとしましょう。
地方の親が亡くなったが、子供らもそれぞれ独立している場合、親の家(実家)に住まないことは珍しいことではありません。
兄弟も誰も相続したがらない以上、あえて手続きをする必要性もないし、そのまま放っておくしかないかなぁ・・・
結果、名義変更の手続きも何もしないで放っておきます。
ところが・・・
「台風の影響で、誰も住んでいない建物の塀が隣の家に倒れた!」なんてことは地球温暖化が進み大型台風が頻繁に上陸する現代ではよくある話です。
そのとき、もし隣の家に塀が当たり、損害が出た場合はどうなるでしょう?
物損ならまだしも、瓦や建物の一部が風で飛んでしまい、通行人に接触し人的被害になることも考えられます。
住んでもいないし、名義も親のままだし、隣に被害が出ても知らないよねぇ・・・
そう思いたいところですが、法的には「ちょっと待った!」がかかります。
民法717条の規定により、所有者が適切にその家屋を管理していない場合、つまり老朽化で倒れかけた塀を修繕もしないで放っておいて、それが引き金となって他人に損害を与えた場合、所有者は責任を負うことがあります。(この損害賠償責任を負うかどうかは、法律的な判断を要します)
将来的にその家屋に住む予定があるのならば、定期的な補修等をしておくことが大切です。この補修等を施しておくことが被害や責任を回避する有効な手段の一つとなります。
もし、その家屋に住む予定がないのならば、安全策はとしては「2つ」
「売却」か「取り壊し」です。
取り壊しには、建物の構造・素材にもよりますが約100万円~の取り壊し費用が発生します。
これほどの費用がかかってくると、誰も住まない建物は資産とはいえません。
この状態を避けるには、一刻も早く売却するしかありません。
できれば土地・建物をセットで売却したいところですが、時間が経てば経つほど、当然のことながら、老朽化した建物は売れなくなります。
その場合でも、もし土地だけでも売れたなら建物の取り壊し費用は売却の利益でまかなえます。
せっかくの大切な資産が足かせになる前に、できる限り早く手続きを!